すべては「愛犬の命を守るために」ー安全性にこだわるパラコード作家 SakuraCordage & Color先生のものづくり
2025/08/05

「大切な愛犬の命を守るために、安心して使える首輪をつくりたい」――。そんな想いから、独学でパラコード首輪を学び、今では作家として活躍するSakuraCordage & Color 森下先生。
"見た目の可愛さ"だけではなく、"安全性"へのこだわりを徹底しながら作品づくりを続ける森下先生が、動画レッスンで伝えたいこととは? 愛犬への愛情と、作家・講師活動への真摯な姿勢がにじむインタビューをお届けします。
愛犬の”赤い首輪探し”が、パラコード首輪作家の第一歩
ーー森下先生がパラコード作家として活動を始めたきっかけを教えてください。
今から10数年前の話になるのですが、愛犬の桜にシンプルな赤い首輪を探していたんです。市販品を色々見ていましたが、サイズが合わなかったり売り切れていたり、「これ」というものになかなか出会えずにいました。
そんな中、桜との旅行先で偶然出会ったセラピードッグの子が付けていたカラフルな首輪がすごく素敵で目を引かれたんです。旅行から戻って、その時目にした首輪に近いものを探しましたが見つからなくて……調べていくうちに、その素材が「パラコード」というものだと知りました。
軽量で頑丈な性質は首輪にピッタリだと思いましたし、パラコードは彩りも美しく、イメージしていたような赤色のコードも販売されていて、「パラコードを使った赤い首輪を自分で作ってみよう」と思ったのが最初の一歩でした。
ーー作り方はどのように習得されたんですか?
インターネットで編み方を調べて、そこから自己流で作っていきました。当時調べたときは、パラコードを使った犬の首輪の作り方はどこにも投稿されていなくて、ブレスレットの作り方しかなかったんです。だからそれを見よう見まねで、「首輪にするにはどうしたらいいんだろう?」という感じで編みました。
でも、ようやく完成した首輪を桜に付けて散歩に出たところ、強度不足で見事に壊れてしまったんです。赤い色も編み目もきれいで見た目はまさに理想通りでしたが、留め部分の耐荷重が不足していて、桜がグッと引っ張った瞬間に首輪が伸びてしまいました。犬の引っ張る力って本当に強いんです。

それからはとにかく安全性を追求して、編み方の工夫だけでなく素材選びもこだわるようになりました。犬の引っ張る力に耐えられるパラコードの強度、留め具の形状や材質など、あらゆる商品を試して確かめながら試行錯誤を繰り返しました。
私は両親が犬のブリーダーをしていて、幼いときは大型犬4〜5匹と暮らしていたので、大型犬の引っ張りの強さはよくわかっていたんです。こちらが引きずられるくらいのすごい力があるんですよね。首輪は、犬の体重の約3倍の耐荷重が必要なので、使用する素材選びはかなり重要になってきます。
ーー作家としての活動はどのようにスタートされたんですか?
そのような感じで、最初は完全に桜のために編んでいたパラコード首輪ですが、完成した首輪の写真をInstagramに投稿するようになったら少しずつ見てくださる方が増えて。「この首輪は販売していないんですか?」「買いたいです」とコメントをいただくようになり、最初は材料費をいただき作成をはじめました。「私が作るものを『欲しい』と言ってくれる人がいるんだ!」と驚きつつ、すごくうれしかったです。

ちょうどその頃友人と、老後の暮らしについて「年金をもらいながら、自分でも月3万円くらいの収入を得られたらいいよね」と話をしていました。会社員として働きながら、将来の収入につながるような"手に職"を見つけたいと思っていたタイミングだったので、「私の作ったこの首輪を喜んでもらえて、手に職をつけることもできるのならやってみたいな」という気持ちでスタートしました。
「愛犬の命を守る首輪を作る」という意識で編んでほしい
──先生の首輪は作品として大人気ですが、FANTISTの動画レッスンの受講生もとても多いですよね。
動画レッスンの販売は、FANTISTさんからお声がけをいただいたことをきっかけにはじめました。実はその時、いくつかの会社さんからレッスン動画のお話しをいただいていましたが、FANTISTさんの「作家さんの活動を応援する」というサービス理念を知り、「ここなら安心できる」と思ってお願いしたんです。
パラコードの首輪は、見た目の可愛さも魅力ですが、やはり一番大事なのは安全性。素材選びや編み方、留め具の位置まで、すべてが命に直結する要素なんです。だからFANTISTの動画では、ただ「編み方」を教えるだけでなく「なぜこれが大切なのか」「なぜこの素材を選ぶのか」といった背景も含めて、丁寧に説明をしています。
パラコード首輪の作り方について、一連の流れを初心者でも分かるように教えているレッスンは、FANTIST以外にはなかなかないと思います。受講者の中にはパラコード作家の方も多くいらっしゃって、学び直しの場として選んでくださっているようです。
──先生がパラコード首輪作りを教える上で、大切にされているのはどのようなことですか?
作家としても、講師としても、最も大切にしていることは安全性です。可愛く見せようとかおしゃれなデザインにしようとか、そういうことよりもまずは「犬の命を守れるかどうか」、それが一番大事なんです。だから、どんなに見た目がよくても、強度が足りないものは私は作らないよう心掛けていますし、また、受講生の方もそうであってほしいです。
凝った難しい編み方の首輪ではなく、どなたでも編めるシンプルで安全な首輪を提案したいという想いがあるので、私が発信しているパラコード首輪は基本は平編みなどで作れるんです。使う道具も特別なものは必要がなくて、100円ショップで揃うものばかりです。

どんな方でもやろうと思えばできるので、大切なのは気持ちの部分だと思います。「可愛いものを作りたい」だけではなく、「愛犬に何かしてあげたい」「愛犬のために作ってあげたい」という想いがある方にチャレンジしていただけたらうれしいです。
普段の対面レッスンなどでは「安全な首輪しか作らないでください」と厳しい言い方をすることもあります。でもそれは、首輪が愛犬の命を守るものだから。愛犬を守るのは飼い主にしかできないことなんです。それが、私が一番伝えたいことです。
安全に使えるパラコード首輪の作り方を、さらに多くの人に広めたい
ーーこれからパラコード首輪作りに挑戦したい人へのメッセージをお願いします。
よく「私もやってみたいんです」とか、「今からでもできますか?」というメッセージをいただくんです。中には「60歳過ぎても大丈夫ですか?」という方もいらっしゃいますが、始めるならいつでも遅くはないと思います。
愛犬のためのアイテムを自分の手で作るって、とても素敵なことです。素材や色を選ぶのも、すべて「うちの子」のためにと思いながらできるのが、手作りの魅力ですよね。だから、素材選びも人任せにせず、自分で「これがいい」と心から思えるものを見つけて試してみてほしいです。パラコードって本当にたくさんの種類があるので、選ぶのは難しいけれど、楽しいですよ。

作家としての活動に興味がある方は、それを目標にしてもいいかもしれません。私の対面レッスンの受講者さんを見ていると、学び始めは「(安全性の面で)怖くて作れない」「販売なんて絶対できない」と話していても、最初は愛犬に作るところからはじめて、少しずつ慣れて自信がついてきて、最終的に作家として活動をされている方も多いのです。
今は会社勤めをしても昔のように退職金をもらえる時代でもないですし。お給料は上がらないのに物価が高くなるし……でも、自分の作品がいろんな人に受け入れられて販売できたら、収入はもちろん気持ちも豊かになりますよね。私のレッスンがそういう豊かさや笑顔のきっかけになって、一人でも多くの「受講してよかった」につながったらうれしいなと思います。
ーー先生の今後の目標や展望を教えてください。
いつかパラコード首輪の作り方の本を出すのが目標です。誰でも始められて、安全に作れるパラコード首輪の作り方を、もっと多くの人に届けたいなと思っているんです。
あとは、今FANTISTで教えている初級者向けの内容を習得している方を条件に、中級者・上級者の方向けのレッスンもできたらと考えています。より安全な首輪を作れるような、さらにレベルの高い内容をイメージしています。

そして、「安全なものを作れる人がすごい」という価値観を広めていきたいです。「これはすごく凝ったデザインですね」と褒められるより、「安心して使えます」「うちの子にぴったりのサイズでした」って言われる方が、ずっとうれしいんですよね。手に取ってくれた飼い主さん、そしてその子にとって、一番信頼できる首輪を作り続ける。それが、これからも変わらず大事にしていきたいことです。
プロフィール
SakuraCordage &Color
愛犬と旅行に行った時に出会ったパラコードの首輪に惹かれ、パラコードという素材を使用した首輪やリードづくりをはじめる。約10年の間 SakuraCordage&Colorとして、主にinstagram・PinterestなどのSNSを通じて作家活動をしている。安心で安全なアイテムづくりという考えのもと、基本的な技術をしっかりとしたうえでのオリジナル編みなどの開発も行う。(Instagramアカウント:sakura_paracord)