金継ぎのやり方は?本漆の金継ぎ・簡易金継ぎどちらも紹介!

2023/10/19

大切にしていた器が割れてしまい、悲しい思いをしたことがある方は少なくないはず。

金継ぎは、器を生まれ変わらせてあげることのできる素晴らしい技法です。

手間暇をかけて繕った器は、より愛着が湧く特別なものになりますよ。

本記事では、
「金継ぎに興味はあるけどなんだか難しそう」
「割れてしまった器を、自分の手で金継ぎしてみたい」

という方のために、金継ぎの種類や方法、注意点まで丁寧に解説しています。

また、「金継ぎを本格的に習ってもっともっと上手くなりたい!」という方のために、金継ぎのプロから教えてもらえる講座も併せて紹介します。

こんなことがわかります

・金継ぎの種類やメリット、デメリット
・金継ぎに必要な道具や材料、やり方
・金継ぎの注意点

こんな方におすすめ

・金継ぎに興味がある方
・金継ぎのやり方が知りたい方
・1度挑戦したことがあるが、挫折してしまった方

金継ぎとは?

金継ぎ(きんつぎ)とは、日本古来の陶磁器の修復技法の一つで、一説ではお茶・茶道が流行し始めた15世紀・室町時代に流行りだしたと言われています。

文字通り「金で継ぐ」という意味です。

割れたり、欠けたりした陶磁器を、本漆や特別な接着剤、金粉、銀粉などを使って繋ぎ合わせ、再び使用できるように修復する技法です。

金継ぎの魅力は、ただ単に壊れたものを修復するだけでなく、その修復の過程で新たな美しさを付加できること。

壊れたものを捨てるのではなく、その傷や欠けを大切にして物に対する敬意や愛着を持って、新たな価値を持たせるという思想から生まれました。

金継ぎ師guu.「【金継ぎ講座】本漆を使った大切なうつわの直し方

金継ぎ|どんな場面で使う?

近年、再び注目を集めている金継ぎは、さまざまな場面で使用されています。

本章では、金継ぎが使われる場面を紹介します。
  • 食器の修復
  • アクセサリーや小物のデザイン
  • 歴史的な価値を持つ陶磁器の修復

食器の修復

日常生活の中で、大切にしていた食器が割れてしまうことは少なくありません。

特に、家族や友人からの贈り物や、旅先で購入したお土産など、思い出深い食器が壊れたとき捨てるのは悲しいと感じることが多いです。

金継ぎは、壊れた部分を美しく修復し、新たな魅力を持った食器として再び使うことができます。

アクセサリーや小物のデザイン

近年、金継ぎをアクセサリーや小物のデザインに取り入れることも増えてきました。

割れた石やガラスを金継ぎで結びつけることで、一点もののジュエリーを作ることができます。

歴史的な価値を持つ陶磁器の修復

博物館や美術館、寺社などで展示されている歴史的な価値を持つ陶磁器は、年月の経過や災害などで損傷することがあります。

そのような場合、金継ぎを用いて修復することで、歴史的な価値を保ちつつ新たな美しさを生み出すことができるのも金継ぎの魅力の1つです。

金継ぎ|種類とメリット・デメリット

金継ぎには、2種類があります。
  • 簡易金継ぎ
  • 本漆の金継ぎ
それぞれの技法には適した状況や用途があるので、選択する際にはメリット・デメリットを考慮すると良いでしょう。

本章では、それぞれの金継ぎの簡単な解説と、メリット・デメリットを紹介します。

簡易金継ぎ

簡易金継ぎとは、伝統的な金継ぎを手軽に行うための方法です。

主に家庭での修復を目的としており、初心者でも安心して取り組めます。

天然の漆を使う通常の金継ぎとは異なり、エポキシ接着剤・パテなどを使った合成樹脂の接着剤を使用します。

【メリット】
  • 速乾性
    合成樹脂接着剤を使用するため乾燥時間が短く、作業時間を短縮できる

  • 低アレルギー
    天然の漆のようなアレルギー反応が少ない

  • 手軽さ
    簡易金継ぎは、本漆の金継ぎに比べて簡単
    キットを使用すればより手軽に行える
【デメリット】
  • 耐久性が低い
    本漆の金継ぎと比較すると、長期間の持続性が低い場合がある

  • 伝統的な仕上がりには及ばない
    本漆の光沢や深みとは異なる仕上がりになる

  • 口をつけるような食器には使用できないことが多い
    簡易金継ぎは合成樹脂の接着剤を使用するため、食品衛生上、口に含む可能性のある食器には使用できないことが大半です。

食品衛生法の基準を満たしている接着剤もごく一部あります。

金継ぎ暮らし「【食器として直せる】はじめての簡易金継ぎ講座

本漆の金継ぎ

本漆金継ぎは、伝統的な日本の修復技法で天然の漆を使用します。

漆は、日本固有の植物から得られる樹液で、長い間接着剤として用いられてきました。

壊れた陶磁器の部分には、漆を塗布し乾燥後に金粉を振りかけて固定します。

【メリット】
  • 高い耐久性
    正しく施された本漆金継ぎは、非常に丈夫で長持ち

  • 深みのある美しい仕上がり
  • 仕上がりに、漆特有の深みや光沢、独特の美しさがある

  • 口をつける食器にも使用できる
    漆は天然素材であるため、安全性が実証されている
【デメリット】
  • 漆の乾燥に時間がかかる
    漆の乾燥を待つ時間が数日〜数週間必要

  • アレルギー反応のリスクがある
    漆はアレルギーを引き起こす可能性があるため、取り扱いに十分な注意が必要

  • 技術が必要
    簡易金継ぎと比べて、熟練した技術や知識が求められる
金継ぎ師guu.「【金継ぎ講座】本漆を使った大切なうつわの直し方

金継ぎ|必要な道具・材料

金継ぎにはさまざまな道具や材料が必要です。

本章では、簡易金継ぎ・本漆の金継ぎに分けて紹介します。

道具

下記3種類に分けて解説します。
  • 簡易金継ぎ・本漆の金継ぎ|共通の道具
  • 簡易金継ぎの道具
  • 本漆の金継ぎの道具
【簡易金継ぎ・本漆の金継ぎ|共通の道具】
・ヘラ(竹ベラ・プラスチックヘラ)
・筆
・紙やすり、ダイヤモンドやすり
・マスキングテープ
・カッターナイフ、デザインナイフ
・小皿
・スポイト
・ティッシュ

【簡易金継ぎの道具】
・綿棒
・竹串やつまようじ
・接着剤

【本漆の金継ぎの道具】
・定盤(じょうばん)
・耐水ペーパー
・真綿
・はさみ
・無水エタノール
・段ボール箱(金継ぎをする器が十分に入る大きさ)
・霧吹き
・ビニールシート
・布巾や雑巾
・紙(粉蒔きの時に使用する)
・温湿度計
・食品用ラップ
・使い捨て手袋
・アームカバー
・エプロン(汚れても良い服)
・サラダ油

材料

簡易金継ぎの材料・本漆の金継ぎの材料に分けて紹介します。

【簡易金継ぎの材料】
・合成漆
・金粉/銀粉
・希釈液
・エポキシ樹脂

【本漆の金継ぎの材料】
・天然の漆
・小麦粉
・水
・砥之粉(とのこ)
・純テレピン油
・黒呂色漆(くろろいろうるし)
・金消粉(きんけしふん)/銀消粉(ぎんけしふん)

金継ぎ|基本のやり方

簡易金継ぎの方法、本漆の金継ぎの方法をそれぞれ紹介します。

簡易金継ぎのやり方

1.割れた破片の断片に接着剤を塗布し、マスキングテープで補いながら接着する
2.接着剤が乾いたら、エポキシ樹脂(1色になるよう練ってから使用)で断片同士の隙間や、欠けた箇所を埋める
3.大きく欠けている箇所は、エポキシ樹脂を厚めに埋める
4.カッターの切れない部分ではみ出したエポキシ樹脂を削る
5.粗めの耐水ペーパーに少量の水をつけて、接着部をやすりで削る
6.ある程度削れたら、細めのペーパーでやすりがけする
7.表面が滑らかになったら付近で拭く
8.合成漆と金粉または銀粉を1:1で混ぜる
9.スポイトを使って希釈液を数的垂らし、マニキュアのような固さに調整する
10.筆に取り、接着部に乗せていく
11.綿棒に希釈液をとり、はみ出したところを拭き取る
12.2日間室温で乾燥させたら完成!

本漆金継ぎのやり方

1.割れた破片の断片を耐水ペーパーややすりで荒く削り、断面に漆を塗布する
2.ダンボールや布巾で作った漆室(うるしむろ)に6時間以上入れて硬化
3.小麦粉を水で練ったものに漆を入れて麦漆(むぎうるし)を作る
4.器とかけらの断面に麦漆を塗布して貼り合わせ、漆室に1週間入れて硬化
5.はみ出ている麦漆をカッターや耐水ペーパーなどで除去し表面を滑らかにする
6.砥の粉を水で練り、漆を混ぜて錆漆(さびうるし)を作る
7.接着部にわずかな段差や小さな穴がある場合、ヘラを使い錆漆で埋める
8.1日部屋に置き硬化させ、耐水ペーパーなどで表面を滑らかにする
9.漆を純テレピン油で希釈したものを塗布し、漆室に6時間以上入れて硬化
10.接着部に、筆で黒呂色漆を塗布し、漆室に1日入れて硬化(3回繰り返す)
11.黒呂色漆と漆を混ぜて呂瀬漆(ろせうるし)を作る
12.接着部に呂瀬漆を薄く塗布し、半分乾いたら真綿で金消粉や銀消粉を優しく撫でるように塗布する
13.漆室に2〜3日入れたら完成!

本格的に金継ぎを行う方は、木製の「漆室(うるしむろ)」を用意しますが、ダンボールで作成したダンボール漆室でも代用できます。

器が十分に入る大きさの段ボールにビニールシートを敷き、その上にお湯で濡らした布巾や雑巾を置いて、温度20〜25度、湿度60〜70度を保つよう調整しましょう。

金継ぎ|注意すること

金継ぎ制作時に、注意してほしいことは、漆によるかぶれです。

皮膚に漆が付着すると、漆が乾く際に皮膚と反応して炎症を起こすことがあります。

そのため、漆が直接肌につくことがないよう、手袋をつける、長袖の服を着る、アームカバーをつけるなどして十分注意する必要があります。

万が一皮膚についてしまった場合は、漆は水では落ちないためサラダ油で拭き取ってください。

かぶれてしまった場合は、皮膚科にかかり薬を処方してもらいましょう。

金継ぎが学べる!レッスン紹介

はじめての簡易金継ぎ講座

簡易金継ぎのデメリットの1つである、「口に含む食器には施せない」を覆してくれる講座です。

本講座は、食品衛生法に基づいた材料を使用しているため、安心、そして安全に金継ぎを楽しむことができます。

また、多くの方が失敗するポイントを押さえ、丁寧に細かく解説してくれます。

金継ぎ未経験の方から、「簡易金継ぎは食器には使えないし・・・」と諦めていた方まで、必見の講座です。

本漆を使った大切なうつわの直し方

「大切なお皿が割れて悲しい気持ちになった時、自分でもお直しできるように・・・」という想いで開講された講座です。

日々手に取り大切に使う器だからこそ、器にも身体にも無理のない「本漆」で繕ってみませんか?

漆の扱い方から道具の使い方、綺麗に仕上げるコツ・ポイントを1つ1つ解説してくれるので、着実にステップアップできますよ。

割れた器を自分好みにお化粧してあげよう

1度壊れてしまったものを、より使いやすくよりお気に入りのものに仕上げるために繕う時間には、なんとも言えない達成感や充足感があります。

金継ぎで直した器の「表情」は1つ1つ異なり、割れる前のお皿より金継ぎした後のお皿に愛着が湧くという方もたくさんいらっしゃいます。

「割れてお終い」ではなく、「次はどんなお化粧をしてあげよう」と器を慈しむ気持ちは、人生をより豊かにしてくれるでしょう。

金継ぎ暮らし「【食器として直せる】はじめての簡易金継ぎ講座